【 木造彩色 一体 室町時代 妙 法 寺 ( 横浜市 名瀬 ) 】
当寺は日蓮聖人の高弟六僧の筆頭格、日昭上人の開山、開基は鎌倉幕府御家人、風間信昭と伝える。
本像は、僧網襟の僧衣に袈裟、横被を着け、右手に笏、左手に経巻を執る日蓮聖人にいわゆる説法像である。
寄木造で玉眼を篏入し、もと彩色であったが、近年の修復後古色仕上げに改められた。
像高は35.3糎。像の構造は、頭体幹部を前後矧ぎとし脚部横材・裳先・両袖口・両手など矧ぎ足す。
構造で特徴的なのは、内矧りした像内の体幹前後材から束を彫出し左右二ケ所で連結し、また前材から像心束を彫出す点である。
前貌表現はやや理想化が見られるものの、眼を見開いた意志的な強い表情に精彩がある。また伸びやかな上体や変化に富んだ
衣文彫出など小ぶりの像であるが、丁寧で本格的に造像である。
制作はその作風から南北朝ないし室町初期とみられ、像内の構造など東国の中世院派仏師の作像を思わせる。
像内背面下部に「衆病悉除 日恵逆」の墨書があり、当寺第七世 日恵上人の逆修造像であることがわかる。
日恵上人は応永十九年(1412)に示寂しており、本像はそれ以前の造像とみられ作風と矛盾しない。
なお、頭部内墨書に「仏師定光 南無妙法蓮華経 文明十七年七月二十一日」とあり、何らかの理由で
造像後まもなく解体修理が行われた可能性がある。
日蓮聖人彫像は、池上本門寺蔵、鎌倉妙本寺像、京都妙覚寺像などを代表的古像とするが、中世作例自体、
数が限られており、本像のような年代推定の出来る佳作は稀である。
(薄井和雄 神奈川県立博物館学芸部長 解説 による))
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